シリウスは、あの火災現場のことがショックでした。
街の野良犬ドレッドが、自分よりも早く身を挺してキャサリンを救った!?
【俺のほうが優れているはずなのに・・・?】
しかも、マルゲリータがチャロに話した内容は、もっと衝撃を与えます。
「昔、ドレッドは今と違ってとっても生き生きしていたし、フレンドリーだったのよ。」
それが2・3年前に、女の子を救ったドレッドをキャサリンの誤解による行動で、ドレッドの右目が見えなくなった・・・
それなのになぜ、キャサリンを救った?
頭からその疑問が消えません。
ある日のこと。
シリウスは、事件現場にキャサリンと出動していました。
「何が起こるかわからないんだから、油断してはダメ!いいわね?」
「シリウス、これは訓練ではないのよ。行くわよ、パートナー!」
「もちろん、オレに任せてくれ!」
キャサリンにそう答えたシリウスでしたが、現場は数時間たっても状況が変わらず、シリウスは次第に上の空に・・・。
マルゲリータから聞いた「ドレッドを傷つけたのはキャサリン」にもかかわらず、ドレッドはキャサリンを救ったその事実。
【なぜなんだ?】
「ドレッド!!」
その時、たまたまドレッドが路地を歩いているのを見かけたシリウスは、思わずドレッドを追いかけます。
それは初めて警察犬としての自覚を忘れたシリウスの職場放棄でした。
追いついたシリウスは、ドレッドを問いつめます。
「なぜキャサリンを助けた?」
「そんなことか・・・」
ドレッドはため息をつき、
「それよりシリウス、頼みがある。チャロのことだ。」
「チャ・チャロだって??」
「そうだ。オレにもしものことがあったら、日本に帰りたいチャロのことを頼む」
「もしものことって、一体何をしようとしているんだ?」
「何も・・・」
「フン、現実を見ろよ!犬が自分で日本へ帰ることは不可能だ!」
シリウスは鼻で笑います。
しかし、ドレッドは真剣です。
「現実?現実には奇跡が起きているぞ。現にこのオレが変わった・・・」
そう言って去っていってしまいます。
「待ってくれ~それじゃ俺の質問の答えになっていないぞ!!」
取り残されたシリウスの耳に響くサイレンの音。
「ハッ、しまった!」
あわてて持ち場に戻るシリウスですが、すでに容疑者を逮捕して事件は解決済み。
しかし、キャサリンはカンカンです。
「シリウス?こんなときに職場を離れるなんて信じられないわ!何があったの?気は確かなの?」
(キャサリン!そ・それが・・・)
「まぁ、シリウスも何か興味のあるものを見つけたんだろう。」
「でも、シリウスは何度も表彰を受けた犬なのよ。それがこんなことをするなんて!シリウス、再教育プログラムへ送って訓練のやり直しよ!」
(待ってくれ、キャサリン!!違うんだ!!俺の話を聞いてくれ~!)
しかし、吼え続けるシリウスの声だけが響くだけで、キャサリンにはその気持ちは届かないのです。
これは、シリウスが初めて味わう苦い失敗でした。
それにしても、まだあの疑問は消えません。
【自分を傷つけた人間を、なぜ命がけで助けたんだ?】
苦悩するシリウス。
