「日本へどうやったら帰れるの?」
そうたずねるチャロに、ボクサー犬は冷たく言い放つ。
「犬は飛行機には乗れない。だから、お前が日本へ帰るのは絶対にできない。」
「あぁ、夢じゃなかったんだ。」
翌朝、チャロが目を覚ますとそこはニューヨークの路地裏。ため息をついたとたん、何かがチャロの足元に投げこまれました。
「食べろ」
「おじさん?」
「なんていった?ドレッドだ。」
ボクサー犬のドレッドが与えたベーグルでした。夢中で食べるチャロ。
「お前は?」
「チャロ。ボクはチャロ!」
「チャロか。自分でえさを探さないと生きてゆけないぞ。一緒に行くか?」
と、あのボクサー犬が声を掛けます。
「う、うん」
うなずいて、チャロはドレッドと一緒に街へ出かけます。
どこへ行くんだろうと思いながら、チャロは置いていかれないようついていきました。
ドレッドに連れられて、あるイタリアン・レストランの勝手口にくると、ドアが開き店の女主人が顔を出しました。彼女は髪が両肩までやわらかく流れ、とても美しかった。
「ドレッド!おはよう。もう来ないんじゃないかと思ったわ。あら?今日は可愛い子犬も一緒なのね?首に何かつけているわ。迷子になったのね。そうだわ!何かいいものを持ってきてあげる。ちょっと待って・・・」
そう言うと、再び店のキッチンに戻り、なにやら持ってきたようです。
「はい、おちびちゃん!これはあなたのよ。あなたとの出会いの記念にね!」
そういってチャロにソーセージを差し出しました。
チャロはそのおいしそうな匂いに飛びつきます。
ドレッドは自分の分の残り物を食べながら、チャロを見ていました。
しかし、チャロはソーセージを食べずにじっと見つめるだけ。
「どうした? ソーセージは嫌いなのか?」
「ウウン・・・大好きだよ」
「なら、早く食え!」
それでもチャロはまだ涙を浮かべながら、じっとしています。
「どうした?」
「だって・・・翔太がはじめて僕にくれたのがソーセージだったんだ」
「ショウタ?」
「ぼくを拾ってくれたんだ。捨てられて死にそうな僕を助けてくれて、そのときにもらったのがソーセージなんだ。」
「いくつだ?」
「8歳だよ」
(翔太・・・もう、逢えないのかな・・・)
翔太との思い出をドレッドに語るうちに、チャロはこらえきれなくなり大声で泣き始めます。
「わぁ・・・ん!」
どうやら泣き声には弱そうなドレッド。どうしたものかと困りきった様子。
ひとしきり泣いたチャロ。
「落ち着いたか?」
「ありがとう」
すると、チャロはドレッドに近づき「ソーセージを一緒に食べようよ」といいますが、ドレッドはこう断ります。
「ありがたいが、やめとこう。それはおまえのだ。食べられるときにはいつでも、なんでも食べる。それがこの街のおきてだ。」
チャロはドレッドの暖かさを感じ、やっとソーセージを食べ始めるのでした。
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