チャロの母親は、やっぱりカノンだった!
そして、毎日翔太さがしに出るチャロをカノンは静かに見守っています。
それを見ていたナムタカ。
「カノン、一体どうしてお前とチャロは引き離されたのだ?何があったんだ?」
「それは…長いお話になります」
カノンは自分の身に起こった出来事を、ナムタカに話しはじめました。
「現世で、私はさなえという名前の老婦人に飼われていました。それはもう、いつも二人一緒でしたよ。」
「ご主人に先立たれ一人暮らしのさなえは、私を話し相手にしていました。ある日、さなえは『未来は君に。あきらめるな』と書かれた足輪をプレゼントしてくれました。その言葉は、さなえの亡くなったご主人が好きな言葉で、私も好きでしたから、とてもうれしかった…。」
「さなえは、妊娠している私を心配して励ましてくれたのです。そんな彼女を私も大好きでした。」
「そうか…チャロも飼い主も愛している。母親のように息子も、な?」
「えぇ…」
しかし、ある日さなえは病気で倒れ、病院に運ばれました。
「そうとは知らない私は、彼女が戻らないので餌もろくに食べられず、家でずっと待っていました。でも、さなえは家に帰ってこなかったのです。」
「それはなんという…」
「数日後、私はチャロを産んだのです。くんくん鳴く自分の赤ちゃんを見て、『無事に生まれてくれてありがとう』そんな感謝の気持ちでいっぱいでした。そして、足輪をはずして、あの子の脚につけました。あの子ったら、その足輪を加えて遊んでいましたね。」
そして、
「ある日、見知らぬ男が家にやってきたので、私はとっさにチャロを公園に隠しました。空き箱があったので、その中にチャロを入れ、『動いてはダメよ』と言って家に戻りました。」
「知らない男が?」
「ええ、でも彼は私の名前を呼んだのです。」
「なんだって?」
「カノン、行くよ!」
実は、その男はさなえの息子で、チャロのことを知らない彼はカノンだけを連れてゆこうとしたのです。
「車は私を乗せて出発しました。逃げ出そうとしましたが、捕まえられて…。だけど、車がチャロのいる公園を通ったとき、私は叫びました。」
『そこに子供がいるのよ!お願い、止めて~!』
「でも…」
そして、チャロは置き去りにされることになったのです。
「それから、もう一度公園に戻ったときには、あの子はいなかった。」
カチカチ・・・ホールに響く時計の音。話し終えたとき、カノンはため息をつきました。
そこへ、元気いっぱいでチャロは宿に戻ってきました。
「カノン♪ここにいたの?」
「あら、チャロ。今日はどうだったの?」
「うん…。あのぅ、カノン、この間はありがとう。」
「えっ?なに?」
チャロはカノンが翔太さがしを手伝ってくれると言ったことがうれしかったのです。
そして、言い終えて高台のほうへ走り去ってゆくチャロ。
そんなチャロを彼女は笑顔で見守るのでした。
