「こんにちはベル。」
チャロは子犬のベルに声をかけますが、ベルは口をきいてくれません。
チャロはゲンブの言葉を思い出します。
「きっと私たちに想像もできないほど、ベルの過去は悲しいものなのだろう。」
もう一度声をかけるチャロ。
「ボクは日本から来たチャロ。キミはどこから来たの?」
しかし、相変わらず答えないベルに、お手上げのチャロ。小屋へ戻ると、ゲンブにたずねます。
「彼がかわいそうだね。何かできることはない?」
「そういえば、一度だけ大きな声を出したことがあった。」
「どんなこと?」
「犬の親子が島へやってきたことがある。そのときベルは大声で泣き出したなぁ。」
「ふーん」
「きっとベルの心残りは、親のことに違いない。君も親のことを思えばわかるだろう?」
「僕にはわからない。だって…とても小さいとき捨てられたから。」
「そうか、お前は両親を知らないのか?」
「うん・・・」
チャロはベルの元へ引き返すと、まじめな顔で声をかけました。
「ねぇ、ちょっと聞いてもいい?ベルはどこで生まれたの?お父さんとお母さんはどこにいるの?ボク…僕ね、両親がいないんだ。」
「本当?」初めてベルが答えました。
「とても小さいときに捨てられたので、両親の顔を知らないんだ」
「え?そうなの?」
「ベルはなぜここにいるの?」
「よくわからないんだ。何も覚えていないんだもの。」
「・・・ベル、僕たち友達になれないかな?」
そんなチャロに微笑でうなずくベル。
村の中を一緒に散歩した二人。
「見て!きれいな花だね。なんというんだろう。」
「マーガレット」
「え?花の名前を?そんなことを知っていたなんて感心したな。」
「どうして知っているかわからないけど・・・」
「焦ることないよ。ね、水遊びに行かない?」
「いいよ」
浅瀬に行くと、二匹の子犬は楽しく遊び始めます。
「アハハ!」
「ワァーイ!」
「久しぶりだよ、こんな楽しいの」
そんな二人をゲンブはやさしく見守っていました。
夕方、ゲンブは言いました。
「チャロ、君には特別なものを感じる。」
「え?」
「どんな人にもどんな犬にも口をきかなかったあの子が話したなんて、ベルは君に本当に心を開こうとしている。」
「そうかな?」
「まるで兄弟のようだな。ハッハッハ!」
そのとき再び、チャロに懐かしい気持ちが訪れます。ベルが他人ではないような不思議なあの気持ちが。
次の日、また池で水遊びをして
「おなかがすいたね?何か探してくるよ。」
「本当?でも…」
「大丈夫!まかせて」
気持ちのよい日差しの中、ベルはうたた寝をしていました。
そして、チャロがソーセージをくわえて戻ってきたのですが…。
「ベル、一緒に食べよう。」
「ウー!ワンワン!!」」
ソーセージを見たベルはうなりだして泣き出したのです。まるで、ソーセージを恐れているかのように。
「わかった、ソーセージは嫌いなんだね。ごめんよ。」
「えーん…」
そして、泣きながらベルは再び地面にうずくまってしまいました。
『ベルには本当に悲しい思い出があるんだろうな。』
困惑したチャロ。さてどうする?
